東京kcal

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今日は失恋レストランからお送りしています、石神です。ここの文章を書くために一生懸命考えていたらお腹が空いたので、失恋までのフルコース定食を食べながらで失礼します。もぐもぐ言ってたらごめんなさい。

『東京の米』は1年半ほど前に一度上演されています。この初演のときに、パンフレットに「東京まるごとHOWマッチ」という文章を書きました。
例の番組で東京の値段を出題したら、「ニアピン賞」は貰えるかもしれないけど、正確な値段は絶対に答えられないから、大橋巨泉も「ホールインワン賞」は出せないだろう、という話でした。だったらお米で、たとえば「何石」というように計算したらどうなんだろう、もしかしたら東京の「ホールインワン賞」が貰えるかもしれない、という結。

今回の再演が決まったとき、あるスタッフがメールで「こんにゃくライス」の話を教えてくれました。米粒大のこんにゃくを炊き上げるそれは、いくら食べてもノンカロリー。もし東京の値段をお米で算出するとして、その米が「こんにゃくライス」だったら、へっぽこです。東京の米は、一膳250kcalのご飯じゃなきゃやっぱり嫌な気がします。こんにゃくライスで測られる東京の値段も、ある意味では的を得ていますが。東京を米の量でも、勿論価格でもなく、カロリーで測る。彼は東京の値段をお米でより精密に測る方法を、教えてくれたわけです。
巨泉メガネを突き破って目潰しするくらいのグッドアイディアだと思いました。

東京タワーを作るために消費されたカロリー。毎日電車が走るために消費されたカロリー。女の子が好きでもない男とセックスするために消費されたカロリー。東京で消費されるカロリー。東京が消費するカロリー。このセンでいけば「ホールインワン賞」を狙えそうです。もぐもぐ。

けれど問題は、お米のカロリーが「食べたお米のカロリー」なのか「お米を作るカロリー」なのかということです。都内に限れば後者で測るより、前者で測った方がはるかに値段は跳ね上がるけれども、きっと東京の値段は前者で測られるんだろう、と思います。東京の枕詞は「消費」ですから。
でも、さっきから、まるで誰かが東京を買占めでもするかのように、「東京の値段」ということを言っていますが、対価を計算するために必要な数値はコストですね。だとしたら、お米も「作るカロリー」で算出しなければならないはずです。
これは困った。

答えが出ないまま、定食を食べ終え、最後に一粒残らずご飯をかき込んで「ごちそうさま」と言った瞬間、お茶碗の中にほかほかと湯気を立てたご飯が出現していました。驚いた私に、つのだ☆ひろ似のマスターは微笑みながら、「ポッカリ空いた胸の奥に、つめこむメシを食べさせる」と口ずさみました。そのとき、分かりました。東京の米は消費された瞬間に生まれるのだと。食べても食べてもキリがない、いくらでも食べられる、でも本当は消費もしてなければ作り出してもいない、幻の250kcal。私のお腹がグウと鳴りました。何も生まないセックスでもなく、セックスで何かを生むのでもなく、セックスしてないのに生まれてしまう何かのように、失恋もしていない私の胸の空洞を埋めたカロリー。私はマスターに言いました。
「チキショウ、いっぱい食わせやがったな。」

おあとがよろしいようで、すみません。

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