2004年11月アーカイブ


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12月のテーマは、「ギンギラギンにさりげなく」にしようかと思っています。石神です。
海のそばに、誰かが誰かを見張るための椅子が置いてありました。
誰が誰を見張るのか、わかりませんが。
泳ぐ人を、泳がない人が見張るための椅子かもしれません。
おぼれた人を、おぼれなかった人が見張るための椅子かもしれません。
えら呼吸の生き物を、肺呼吸の生き物が見張るための椅子かもしれません。
それともただ、悲しいときに入日を眺めるための椅子かもしれません。
水たまりの中で、椅子の足が錆びはじめていました。

 まずは、webのニュース!
『ポエムの獣』特設web「スペシャル」にて、「衣装日記」が公開されています。
●そしていよいよ今週火曜!スパーキングフェスティバル・ショーケース企画にむけ、
 『何処かの王子さま』特設webがオープンしてます!
 ペピンのお芝居つくりの様子がちょっぴり覗いていただけるような内容になっています。
 ぜひ、ご覧になって、感想など、こちらに書き込んでいただけたらうれしいです。


 いま、私は稽古場でPCに向かっておりまして、
今回のひとり芝居の唯一の出演者(当然ですね)が小さな机を前に立ったり座ったりしています。
飛び入りを含めた数人の役者と、音響・照明・webスタッフが、それを囲んで、
ああでもないこうでもないと茶々を入れています。なんだかみんな笑っています。
なかなか、うまくいかないみたいです。ついでにそろそろ夕飯の時間みたい。
皆、差し入れのチョコレートを、有難そうにパクついています。
すると、誰かメンバーが外に出て行きました。と思ったら、
窓の外から役者に合図を送っています。
どうやら、窓の外に向かって芝居をしてみろという意味らしいです。
どんな意味がある練習なのか、途中から見ている私にはよくわかりません。
でもなんだか、みんなおおまじめです。
だからきっと、とても大事な意味があるのでしょうね。
窓の外のメンバーは、寒い中マフラー1枚で、役者の芝居をみつめています。
外はもう真っ暗です。
みんながあれやこれやと話し合っていたと思ったら、部屋の電気まで消えました。
せりふが聞こえ出して、みんなはしん、とそれを見守っています。
高校時代、大雪で帰れなくなって、学校に泊まった寒い夜を思い出します。

 こういう、お芝居つくりの時間は、不思議な雰囲気です。
馬鹿みたいなことをみんながおおまじめにやって、まじめなことでみんなが笑っています。
合理的発想とか、忘れちゃったみたいに見えます。
何のためか、誰のためか、わからないけれど、
何かのため、誰かのためになるか、わからないけれど、
何かのため、誰かのために、なればいいと思って、なると思って、やっているように見えます。


 稽古場の中継をしていたら、ひとつ思い出した情景がありました。
私のうちの近所には、少し広い芝生の公園があって、
夕方になると、生命力を無駄遣いするみたいに走り回っている犬と、
犬が満足するまでのあいだの時間をおしゃべりに費やす飼い主さんたちが集まってきます。
その公園のそばに、毎日たたずんでいるおじいさんがいます。
おじいさんは、花壇のへりに座って、少し離れて公園の様子を眺めています。
飼い主さんに話しかけることも、興奮気味の犬たちと戯れようとすることも、ありません。
そして、日が落ちるころになると、何処へともなくスタスタと帰っていきます。
お土産に、花壇のコスモスを2、3本摘みとって、帽子か胸元のポケットに飾って。
あとには、茎だけになったコスモスが寂しく風に吹かれています。

 おじいさんが、どういうつもりで毎日必ず通ってきては、ただ犬たちを眺めるのか、
公共物の花壇から、コスモスを取っていってしまうのか、わかりません。
でも、なんだか私はそれを見て、
「これは、このおじいさんの仕事なんじゃないか」と思いました。
職業ではないけれども、趣味とか、時間つぶしとか、自己満足とか自己犠牲でもなくて、
時間と労力を払って、花をもらって帰る。
おじいさんを毎日そこに駆り立てるものは、責任感と、義務感と、それを果たす喜び。
帰っていくおじいさんの背中に「勤勉」という文字が浮かびます。
誰の役に立っているのか、わからないけど、
「少なくとも私の役には立ってる」なんて言ったら嘘になるけど、
でも、誰の役にも立っていないとも思わないんです。
毎日どんどん寒くなるのに、おじいさんはやっぱり来るんだもの。


ねえ、それって、誰かの役に立ってるの?
暖房が効かないので、稽古場のみんながマフラーをしてコートを着始めました。
でもそのうち、なんか答えがみつかるかもね。たぶんね。きっとね。もしかしたらね。
最近、ほんとうに寒くなりましたね。
あさってお会いできる皆さん、風邪を引かないように、あたたかくしてお越しください。

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