鎌倉には秋から冬になるとリヤカーを引いて
やきイモを売りに来るおじさん(今はもうおじいさん)がいる。
鎌倉は観光地だから外を散歩する観光客にやきイモが
とても売れるのだ。地元の人も買うけれど、最近はもっぱら、
観光客を相手にしているように思う。
僕は小さい頃からずっとおじさんのやきイモを買ってきた。
ずいぶん長い付き合いだから、おじさんに顔を覚えられている。
おじさんのやきイモはちょっと高いのだけれど、イモはどろ?っと
していて甘くて熱い。
おじさんは、僕がお金を渡すと、たいていおつりを多く返してくれた。
「おつりー、500円ナ」と言うんだけど、手のひらにはなぜか700円くらい
渡されていた。それは一度や二度ではなくほとんど毎回だった。
おじさんは、多分地方から出てきているんじゃないかと思う。
方言がきついからだ。そして、おじさんは、秋から冬にかけて
ほんの数ヶ月だけ鎌倉に来る。
おじさんは、もう「おじさん」と呼べないくらいの年齢で、耳は遠いし、
「おじいさん」に近くなっている。というより、おじいさんだ。
おじさんは来年も来てくれるのだろうか。
冬の最終コーナーで、僕はいつもヒヤヒヤする思いでおじさんの
到来を願い、春を迎える。
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