最近時々、地元のお寺でお仕事をしています。
今日はおもしろいことに出会ったので、誰かに話したくなりました。
もうじきお彼岸なので、お墓参りの人が増えてきました。
ところが、墓地に蜂が巣食ってしまって、苦情が出ているのです。
墓地のどこかというと、お墓の中です。
どのお墓にも、地下に、お骨を納める部屋のようなものがあります。
石で切った小さな部屋のようなところに、骨壷ごと納められているのです。
お墓は一見密閉されているようですが、実は虫が出入りできるほどの隙間があります。
地下は暗くて涼しいので、そこにミツバチが巣を作ったのでした。
以前は、お墓の隣に巣箱を置いて蜂蜜を採ったこともあるそうです。
日本ミツバチは比較的おとなしく、あまりこわくはないそうなのですが
お墓参りの人の中には自分で駆除しようと薬をまいてしまう方などもいたのです。
そこで蜂を殺さずに済むよう、蜂の巣ごと、巣箱に移して引越しさせることにしました。
住職と2人、ネットと軍手で武装して、いよいよお墓を開けることになりました。
お寺は山の腹にめりこんだような形で建っていて、自然に囲まれているというよりは
緑の中に「埋もれつつある」といった方がふさわしいような場所です。
見たことのない赤くて細い蛇が、墓石を伝ってするすると逃げていきました。
おん年70にもなろうという住職が、ふうふう言いながら重い石の蓋を持ち上げると、
ぶんぶん唸る音と一緒に、いっせいに蜂の群れが飛び出してきました。
そこには地下室の入り口を覆う、びっくりするくらい立派な蜂の巣が。
その奥には、ひっそりと並んでいる、いくつもの白い骨壷が見えました。
合掌。
のこぎりで巣を地下室の壁から(半ば無理矢理)切り離し、急いで巣箱へ入れると
蜂の群れの反撃から2人してダッシュで逃げました。
墓地の片隅の木陰に巣箱を設置して、一件落着です。
巣箱には、蜂が出入りできる小さな隙間と、お寺のような屋根までついているのです。
お墓の中には、まだ数十匹のミツバチが残っていましたが、
いずれ彼らも、自力で巣箱へ辿り着くでしょう。
お墓を開けるなんて、眠っている人を叩き起こすようで申し訳ない気がしたのですが、
蜂の巣が取り除かれて、これからは静かに眠れるかもしれません。
でも、不謹慎かもしれませんが、死んだ人のお骨の周りに
蜂たちが巣をかけ、女王蜂が新しい命を生み出していると想像すると、
不思議な感慨に襲われます。
そしていつしかお墓の下には、甘い甘い蜂蜜が溜まっているのです。
住職によると、日本ミツバチの蜂蜜は、西洋ミツバチのそれより味が濃密で甘いそうです。
長年死んだ人たちのそばで生きてきて、ためらいなくその蜂蜜を口に出来るこのおじいさんに、
私もだんだん影響されつつあります。
曼珠沙華が満開です。
骨と蜂蜜
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